〈ヒマラヤ名峰事典〉 ヒンドゥークシュに住む「異教徒」、 |
いま、カラーシャの社会は大きな変革期を迎えている。外部資本による巨大なホテルが幾つも建てられ、さまざまな軋轢を生んでいるうえ、教育を受けた青年たちが農耕や牧畜に嫌気がさして観光地化への道をひた走ろうとしているのが、とても気がかりだ。すべてが話し合いで決まる民主的な社会であるだけに、若者たちの勝手な動きを、もはや伝統的な共同体がコントロールできなくなっている。
現在のカラーシャを取り巻く環境のなかで、合理的で近代的な暮らしをしようとすると、そのまま外部のイスラム社会との関係を深めることにつながっていく。「異教徒」のままこの時代を乗り切るのはたいへん困難なことではあるが、せめて民族としてのアイデンティティだけは失わずにいてくれたらと、願わずにはいられない。